「でも結局、行くことになって私とお兄ちゃんは口も効かずにずっと仏頂面だったの。それでお父さんたちがパラソルを立ててる間に、私はふて腐れてひとりで海で遊んでたんだ。そしたらいつの間にか流されて溺れちゃって……」
「え?」
俺がビックリしたところで、葵は安心させるようにニコリと笑った。
「お父さんよりお母さんも先に気づいて、私を助けてくれたのはお兄ちゃんだった。大丈夫か?って必死な顔をして私を抱きしめてくれて。私はしがみつくことしかできなかったけど、お兄ちゃんがお兄ちゃんで良かったって、その時思ったんだよね」
「へへ」と葵は照れたような表情をしていた。
これを聞いたら日向はどんな顔をするだろう。お兄ちゃんがお兄ちゃんで良かった、なんて絶対に嬉しいに決まってる。
「私ね、大好きな家族に囲まれて、大好きになった先輩と付き合えて、こんなに幸せでいいのかなって。あとでバチが当たるんじゃないかって怖くなるくらい」
葵はいつも素直だけど、今日は行きたかったひまわり畑に来られた嬉しさからか、いつもより本音を見せてくれている気がする。
「幸せになっていいに決まってるでしょ」
俺は葵の頭を優しく撫でた。
葵の明るさは人を笑顔にさせる。俺もそう。日向だって、葵を見てると太陽に照らされたみたいに心が暖かくなって、こっちこそ幸せな気分をもらってる。



