心にきみという青春を描く




「先輩は家族でこういうところ来たことある?」

葵が髪の毛を右耳にかけながら言う。


「あんまり記憶がないな。両親はどっちも出掛けるのが好きだけど、俺がこんな感じだから連れてき甲斐がないみたいだよ」

「たしかに先輩は感動していても分かりづらいもんね」

よく言われる。全然楽しんでないだろとか。つまんないのとか。これでも一応テンションが上がったりすることはあるんだけど、葵の言うとおり分かりづらいんだと思う。


「葵は家族で旅行とかする?」

「小学校の時にみんなで海に行ったことはあったよ。両親が予定を立てたんだけど、私とお兄ちゃんは乗り気じゃなくてね」

「なんで?」

日向はともかく葵は真っ先にはしゃぐタイプなのに。すると葵の声が少しだけ低くなった。


「思い出のためじゃなくて、これを機に仲良くしようみたいなのが見え見えで。心の整理もできていない時だったし、旅行なんて絶対嫌だってその時はお母さんと喧嘩したんだ」

その言葉に違和感を覚えた。仲良くしよう?心の準備?尋ねようとする前に、葵がまた話はじめる。