「そういえば今年の全日本のコンクール、先輩は出るんでしょ?」
葵と付き合うようになってから、俺はコンクールにも参加するようになっていた。
つまらないテーマのものももちろんあるけど、俺が賞を獲ると葵は自分のことのように喜んでくれるし、やりがいは感じている。
「出る予定だよ。っていうか先生に期待されちゃってるし……。日向も出品するでしょ?」
「お前が立て続けに賞なんて獲ったりするから、うちの美術部の知名度があがって、ほとんど強制参加みたいなもんだろ」
「だよね。ごめん」と謝ったところで、すかさず葵がフォローに入った。
「でもなぎさ先輩を目標にしてる人がいっぱいいるし、今年の新入部員は去年の倍以上だって言ってたよ。美術部は日の目に当たりにくい部活だし、強制でもなんでもコンクールに参加することに意味があると思うな」
全日本のコンクールは美術のみで芸術はない。だから人一倍参加意欲がありそうな葵は俺たちの応援だ。
「先輩はもうなに描くか決まってる?」
「うーん。全然」
今回はテーマなどはなく、基本的になにを描いてもいいことになってるけど、まだなにも浮かんでない。
すると、なぜか葵の表情が輝き出して「そう言うと思っていいもの持ってきたよ!」と、机に本を広げた。



