心にきみという青春を描く




「え、ここって……」

先輩が自転車を止めたのは学校の前だった。先輩は邪魔にならないように自転車を道路の端に寄せて校門に手を確認する。


「やっぱり鍵は閉まってるか」と、ガチャガチャと音を立てたあとに、先輩は柵に足をかけて簡単に校門の向こう側へと行ってしまった。


「先輩、ダメですよ!」 

声が響かないように一応、小声で注意する。


「夜の学校に入っちゃダメなんて校則に書いてあった?」

「書いてなくてもダメでしょう。怒られちゃいますよ」

どこに行くのか頑なに教えてくれなかったから怪しいとは思っていたけれど、まさか学校だったなんて予想できるわけがない。


「戻ってきてください」

「やだ。なつめも来て」
 
「ム、ムリですよ!私は先輩みたいに身軽じゃないです」

すると、先輩は「ん」と両手を上に差し出した。

 
「大丈夫だよ。受け止めるからきて」

その言い方は反則じゃないかな。

先輩が受け止めてくれるなら断りたくないし、私に差し出されている手に触れたいという気持ちのほうが勝ってしまう。