心にきみという青春を描く




先輩は時間どおりに家まで迎えにきた。

先輩に呼び出されることなんて初めてだったので、なんとか可愛く見せようと妹に洋服を借りて、髪の毛まで下ろしてきたのに……。


「あれ、お風呂上がり?」

先輩の第一声はこれ。

期待はしてなかった。でも努力ぐらい察してくれてもいいじゃないかと、私は膨れっ面。


「なんで怒るの?お腹でも痛いの?」

「もう違いますよ!」

「ふーん。まあ、とりあえず乗りなよ」


先輩が自転車の後ろを指差したので、私は不機嫌なままちょこんと股がる。私が乗ったのを確認すると、先輩はゆっくりとペダルを漕ぎはじめた。

サラサラと夜風に揺れる先輩の襟足。ぎゅっと先輩のパーカーを掴む頃には、不機嫌になっていることがもったいなく感じて私から話しかけた。


「これからどこに行くんですか?」

「どこだと思う?」

「どうして私を呼び出したんですか?」

「さあ、どうしてでしょう」


聞いては流されるを繰り返して「全然答えになってませんよ!」と言うと、先輩が少しだけ顔をこちらに向けた。それはとても嬉しそうで、私をわざとムキにならせて楽しんでいるかのようで。


この振り回されているやり取りが、たまらなく愛しく思っていることなんて、先輩は知らないでしょう。

いちいち心が掴まれる感覚になってるなんて伝えたら、先輩はやっぱり困ってしまうだろうか。