心にきみという青春を描く




「はいはい、みんな聞いてー!」

と、その時。笹森先輩の手叩きが二回響いた。


「事前に伝えたけど、今月は基礎デッサン強化月間だから。一年生は特に自由な絵を描く前に、しっかりと基本的なことから覚えていってね」

笹森先輩は部長というより、顧問の先生のようだった。


絵を描くのは昔から好きだけど、デッサンなどの勉強はしたことがないし、難しいイメージもある。

だけど、デッサン力を身につけることによって、観察力や集中力。物体を客観的に見る力も備わるのだと、笹森先輩は説明してくれた。


「じゃあ、とりあえずイーゼルを用意して、このリンゴを描いてください」

渡されたリンゴはとても赤くて美味しそう……って、そうじゃなくて。イーゼルって、なんだろう?


「ほら、あれを使うんだよ」

ぼんやりしていた私に、なぎさ先輩が指をさす。その先には木製のなにかが折り畳まれた状態で並んでいた。


「イーゼルを使うと絵を立て掛けながら描けるんだ。もう少し大きな絵を描く時はH型を使うんだけど、今日は三脚型で十分だから、左端にあるやつを持ってきな」と、なぎさ先輩に教えられて、私はコクリと頷いた。


三脚を広げて、リンゴと一緒に渡されたスケッチブックをそこに置くと、なんだか自分がすごい絵を描ける人のように思えてくる。