心にきみという青春を描く




「親しくしてたって……中学校の頃ですか?」

「そーそー」

なぎさ先輩の中学生時代を私はなにひとつ知らないけれど、今まで疑問に思っていたことや松本先輩、詩織先輩に聞いたことを推測すると、明らかに中学校の時になにかあったことは想像がついていた。


『俺はお前のこと、許してねーからな』

またあの言葉が脳内で繰り返される。


「……先輩と、なにがあったんですか?」

尋ねた途端に、今までのことが溢れだしたように止まらなくなった。


「先輩が人物画を描かなくなったことと関係ありますか?」

「………」

「先輩が、黒く塗りつぶしてしまう理由を知ってますか?先輩が青いひまわりだけを描く意味を――」

すると、遮るように日向くんは鼻で笑った。


「つか、それ全部あいつに聞けば」 


腹は立たなかった。そう言われて当然だと思った。

だって、先輩に聞けないことがこの人の前でならするすると滑り落ちる。


先輩が一線を引いてるとか、見えない壁があるとか、聞いたところで答えてはくれないとか、そんなのは私が勝手に思っていたこと。


先輩との距離を越えられないのは、私が怖いから。

先輩が誰かを想っているんじゃないかと。心の中でその人のことばかりを考えながら絵と向き合ってるんじゃないかって、それを知るのが怖いのだ。


「なあ、お前に魔法の言葉を教えてやろうか」

ひとりでぐるぐると考えている中で、日向くんが言った。


「〝あおい〟って、あいつの前で言ってみな。あのポーカーフェイスが一気に崩れる瞬間が見られるぜ」

私の返事を待たずに、日向くんはバス停がある方向に歩きはじめた。


――〝あおい〟

何度も心で呼んでみた。呼ぶたびに胸がちくりとした。