心にきみという青春を描く




「なんか元気ないね」

1日の授業が終わって放課後。私は美術室へと向かい、ため息をついていたところをなぎさ先輩に見られてしまった。


「……そんなことないですよ」

ただ天音くんに対して少しモヤモヤしてしまってるだけ。

そんな天音くんはちゃんと部活に参加している。と、言っても先輩たちに挨拶もしないで、部屋の角にある机にひとりで座っているだけ。


「ねえ、見て」

なぎさ先輩がふと、ポケットからスマホを出した。

カバーをしていない買ったままの白いフォルムを見えやすいように私に傾ける。画面に写っていたのは、日に当たって気持ち良さそうに寝ている猫の写真だった。


「これが三宅さん。癒されるでしょ?」

なぎさ先輩はきっと私を元気づけるために見せてくれたのだろう。


たしかに可愛いし癒される。でも、そんな猫を起こさないように、先輩はそっと写メを撮ったんだなって想像したら……。

猫よりもそっちのほうが癒されてしまった。


「マロンちゃんじゃないんですか?」

たしかメッセージでそう言っていたけれど。


「〝ちゃん〟じゃないよ。オスだもん。そもそもマロンって、おかしくない?毛色は栗色だけど犬みたいじゃん」

「三宅さんも……あまり猫っぽい名前ではないですよ?」

「え、なんで?三毛猫だから三宅って、俺はすぐに思い付いたんだけど、逆に猫っぽい名前ってどんなの?」

「タ、タマとか?」

「ぶっ、タマって!!」


わりと真剣に。いや、無難な名前を答えたはずなのに、どうやら先輩のツボに入ってしまったらしく大笑いしている。

ケタケタとお腹を抱えている先輩の笑いどころがイマイチ分からなかったけれど。そんな先輩の無邪気な笑顔を見てると、こっちまで「もう」って呆れながらも笑ってしまう。