心にきみという青春を描く





『なつめはそのままでいなよ。俺みたいになっちゃダメ』

あの時も。


『前はね、一心不乱で描けたんだよ。ただ好きな気持ちだけで。でも今はなんのために描いてるのか分からない』

あの時も。


『……嫌いになりたいんだよ』

そう言っていた先輩は今じゃなくて過去を見ている瞳をしていた。


「私も昔から絵を描いてたから高校に入る前から三上先輩のことは知ってた。ものすごい絵を描く中学生がいるってけっこう有名だったのよ」

すると、詩織先輩がゆっくりと語りはじめた。


「美術のコンクールって審査が学年別じゃないでしょ。だから中学生の頃は私もよく出品したりしてたんだけど、そのたびに落選して、結果を見るといつも三上先輩が賞をとってた」

「……そう、だったんですか」

「本当にすごいのよ、三上先輩は」


詩織先輩がなぎさ先輩のことをこんな風に思っていたなんてはじめて知った。


「誰にも真似できない独特の感性と表現力は、あの頃からずば抜けてた。だから私だけじゃなくて、先輩に憧れてた人はいっぱいいたと思う」

川の水面に反射した光が、まるで模様みたいに私たちの肌に映る。


「でも先輩は、ある日を境に絵を描かなくなった」


ぴちゃんと川でなにかが跳ねた。それが魚なのか確認する気持ちの余裕はない。