「じゃあ、私もキャンバスにします。ところであの……水彩絵の具の青色って何色ぐらいあります?」
私がホームセンターで買った絵の具は色が単色ずつしかなくて、使いたい色じゃない。
「メーカーによって違うけど、多いところでは20種類ぐらいあるんじゃないかな」
「じゃあ、水彩絵の具のコバルトブルーもありますか!?」
思わず声が響いてしまい、私は不自然に前髪を触る。
「三上先輩と同じ絵の具の色がいいのね」
詩織先輩にはすぐに見透かされてしまい小さく返事をした。
「コバルトブルーもあるよ。アクリルとは色味が違うけど、海みたいな綺麗な色よ」
「今度、買ってきます」
描きたい絵が決まってないなんて嘘。本当は今すぐにでも描きたいものがある。先輩は約束なんて忘れてしまったかもしれないけれど。
「三上先輩となにか進展はあった?」
その質問に私は首を横に振る。
詩織先輩になぎさ先輩のことが好きなの、と聞かれた日から、私の気持ちは大きく変わった。
あの時は曖昧だったけれど、今は堂々と好きだと言えるものに成長した。
でも、私と先輩の距離はなにも変わってない。
私は先輩の一挙一動に心を揺さぶられるのに、先輩の気持ちは一ミリも動いてない。
「……なぎさ先輩、きっと過去になにかあったと思うんです」
手を力を入れながら、私は川のせせらぎよりも小さな声で呟いた。



