【そういえばさ、学校にいる三毛猫の名前、マロンだって知ってた?今クラスの人が話してたんだけど】
唐突に変わった内容は、きっと美術室の鍵に付けられたストラップのモデルの猫だろう。
【え、嘘。俺、レオナルドだと思ってた】
【茶々じゃないんですか?】
【俺は三宅さんって呼んでたよ】
先輩たちの会話に思わず笑いそうになる。
不自然に咳払いしながら誤魔化して。なんだかんだ仲良しで楽しい先輩たちと、早く私も仲良くなれたらいいなと思いつつ……。
このやり取りを共有していない天音くんに視線を向けた。
天音くんはメッセージグループに入っていない。もちろん松本先輩は誘ったけれど、アプリをインストールしてないと連絡先さえ教えてくれなかった。
「ねえ、天音くん」
私はホームルームが終わったあとに声をかけた。
「今日の部活来るよね?その時に自分の画材がある人は持ってきてだって」
「………」
天音くんはチラッと私のことを見たけれど、すぐにノートを広げはじめて返事すらしてくれない。
「あ、あの」
聞こえなかったのだろうか。それとも私が同じ美術部だって気づいてない?
昨日は直接、天音くんとは会話しなかったし、特徴がある顔でもないので忘れられてる可能性もある。
「わ、私、同じ美術部で、今笹森先輩からメッセージがあったからそれを天音くんに伝えたほうがいいかと思って……」
「僕のことは気にしなくていいから」
「え?」
「馴れ合うつもりで部活に入ったんじゃないし」
天音くんは私を拒絶するような言い方だった。ビックリして、だけど『なんでそんなこと言うの?』なんて、言い返す勇気もないから、私はそのまま自分の席に戻った。



