心にきみという青春を描く




合宿ではもちろん藤田先生も引率として同行して、部活動の一貫なので服装は制服。

宮ノ森公園内にあるログハウスを借りて、みんなで自炊をしながら自然溢れた場所でコンクールに向けての絵を描くことが決まったのだけれど……。


「先輩は本当にコンクールには参加しないんですか?」

校舎を出た帰り道。私は途中までなぎさ先輩と帰ることになり、先輩は隣で自転車を押していた。


「しないよ。合宿は強制みたいだけど」

なぎさ先輩からはひんやりとした空気を感じる。

これはまだ不機嫌な証拠。私も今朝のことがあり、まだ胸がモヤモヤとしているけど、先輩はそんなこと忘れてしまったみたいに頭ではきっと別のことを考えている。


「先輩は絵を描いているのに、絵を追求されたりすると、急に刺々しくなりますよね」

穏やかな顔が冷たくなって、まるで私の知ってる先輩じゃないみたい。


――『なぎさって今でこそあんな感じだけど、昔はすげえとっつきにくい雰囲気だったんだぜ』

それは以前、松本先輩が話してくれた姿そのもの。


「……嫌いになりたいんだよ」

カラカラという車輪の音に重なって聞こえた声。


「でも俺は絵を描くことでしか表現できないし、発散もできない。嫌いになりたいのに、そこに頼んなきゃいけない。だからイライラする。無性に、どうしようもなくムカつくんだよ、自分のことが」

先輩の横顔は怒りというよりは悲しみだった。


絵を嫌いにならなくちゃいけない理由はなんですか?

絵を描かなければ発散できないものってなんですか?


でも、聞いたところで先輩はきっとこう言う。

『なつめ、それは答えたくないことだよ』と。


でも私はいつか触れてみたいのだ。

先輩が誰にも見せない心の奥。

そこに触れてもいい存在になりたいと言ったら、やっぱり先輩は私を優しく拒絶するだろうか。