「健一さん。私ずっと一緒にいられると思ってたんです。一年もじゃなくて、二年三年四年ってこの先ことを私は考えてた」
詩織先輩がゆっくりと、村尾さんの手を離した。
「お、俺だって同じだよ。このままの関係でいられたら、ずっと一緒にいられるだろ?」
「でも、それは私が思ってる〝一緒〟じゃない」
そう言いながら先輩の瞳から一筋の涙が伝う。
「ごめんなさい。私は健一さんが奥さんと別れてくれることを望んでました。不倫はいけないことだけど、いつか堂々と健一さんと付き合える日がくると思ってました」
「……詩織」
「でも、そうじゃないのなら私は健一さんとこれ以上付き合うことはできない」
先輩は本当に村尾さんのことが好きだった。でもこのままの関係でいたいわけじゃない。それが、詩織先輩が出した精いっぱいの答え。
「……え?っていうかなんで俺が振られるの?」
気が触れたように、村尾さんは髪の毛をぐしゃっとした。



