じわりと胸が熱くなる言葉。
詩織先輩が聞いたらどう思うだろう。村尾さんよりも、もっといい人がいるということ。こんなにも詩織先輩のことを想ってる人がいるということを知ってほしい。
「あ……」
その時、なぎさ先輩がドアのほうに目を向けた。そこには買い物から帰ってきた詩織先輩と天音くんの姿。
この異様な雰囲気にふたりは立ったまま動かなくて、誰よりも先に詩織先輩へと駆け寄っていったのは村尾さんだった。
「詩織!見てよ、これ。松本くんに殴られたんだよ!」
まるで松本先輩を悪者にしようとしてる態度。
……本当にこれが三十過ぎの大人なんだろうか。情けなくて、白々しくて、ため息も出ない。
「バカですね。けっこう前から聞いてましたよ。松本先輩の声はでかくて外まで丸聞こえだったんで」
天音くんが呆れたように言った。
「し、詩織……」
ずっと黙っている先輩にしがみつくように、村尾さんは手を握る。
「周りはこうやってとやかく言うけど、詩織は分かってくれるよな。だって俺たち一年も付き合ってるんだから」
すると、詩織先輩が切なそうに眉を下げた。
「一年、も?私はまだ一年って感覚だったけどな」
こんな悲しい顔をした先輩は見たことがない。



