「うん。してるよ」
村尾さんは隠すことなく、あっさりと認めた。
「……笹森は?笹森と付き合ってますよね?」
店内が険悪なムードでピリピリとしている。
……詩織先輩が買い出しに行っていてよかった。自分のことでこんな空気になっているなんて、とても気まずいと思うから。
「そんな怖い顔しないでよ。ちゃんと詩織のことも大切にしてるよ」
村尾さんは悪びれる様子も笑みさえ溢している。その余裕ある表情に、さらに松本先輩は顔を険しくさせた。
「は?ちゃんとってなんすか」
村尾さんに詰め寄ろうとする先輩を私はとっさに止めた。
「えっと、村尾さんはその、ちゃんと詩織先輩との将来のことも考えてます。今年中には奥さんとのことを整理して、詩織先輩と一緒になるって――」
「ふ、はは」
と、その時。この空気にそぐわない笑い声。
笑っているのは、なぜか村尾さんだった。私はなにかおかしなことを言っただろうか。
胸の奥がひりひりする。
「それって、詩織が言ってたの?」
眼鏡の向こうがわの瞳はなにを考えてるか分からない。
私だって勝手にこんなこと言うべきじゃないと思った。でも、詩織先輩がこの場にいない以上、私が松本先輩をなだめないといけないと思ったのだ。なのに、今は私がイライラしてる。
「どうして笑うんですか?」
なんだかバカしているように感じた。



