心にきみという青春を描く




私服姿のせいか予備校の時よりも若く見える。

……今日はお仕事はお休みだったのかな。連絡がとれないと詩織先輩はあんなに不安がっていたのに。


「……どうも」

きっと複雑な心境のはずなのに松本先輩は村尾さんに軽く頭を下げていた。


「ひょっとして松本画材店って松本くんの家だったの?学校で使う画材はほとんどここで買ってるよ。まあ、普段はネットで注文しちゃうことが多いけど」

「ありがとうございます。親父に言っときます」


まさか村尾さんが松本画材店を利用してたなんて、世間って狭いなと思いつつ。ドキッとしたのは村尾さんの左手の薬指。

予備校の時は外している指輪を今日はしていて、もちろん松本先輩がすぐに気づいた。



「あれ、それって……」

まずい、どうしよう。


村尾さんが既婚者だなんて先輩は知らないし、知らないほうがいいだろうと私も言わなかった。

やっと村尾さんが彼氏だということを受け入れつつあったのに、なんでこのタイミングで……。


「あー、うん」

村尾さんは指輪を擦って口を濁す。


「もしかして結婚してんすか?」

松本先輩の声が低いものに変わった。