心にきみという青春を描く




「こ、校則では女子は二つ結びと書いてありました」

先輩の手を払うこともできないので、私は触られるがまま。


「うん。でも誰も守ってないよ。なつめは真面目なんだね」

その言葉に私はまたぶすっとする。


「けなしてないよ。褒めたのに。今時珍しいなって」

「褒められてる気がしませんでした」

「そっか。うまく褒められるように勉強しとくよ」

先輩はそう言って私の頭を優しく撫でた。子ども扱いのつもりだろうか。くすぐったい。でも恥ずかしい。


「先輩、また絵の具がついてます。今日はパーカーに」

どうして私より遥かに絵に詳しくて、たくさん描いているはずなのに、毎回絵の具を付けちゃうのかな。

子どもは先輩のほうじゃないですか?なんて、言えるはずがないけれど。
 

「本当だ、いいや。家に帰ってクレンジングオイル使えば落ちるし」

「クレンジングオイルって、化粧落としの?」

「うん。付いてすぐだと中性洗剤でもいけるけれど、絵の具はオイルが一番手っ取り早いんだ。そのためにドラッグストアで買ってるぐらい。たまにレジの人に変な目で見られるけど」

絵の具が付いたらオイルで落とす。今日はたくさん絵に関することを学べた気がする。


「もうすぐ予鈴が鳴るね」

先輩が壁にかけられた時計を確認した。静かだった校舎には、いつの間にか生徒たちの声が響いていた。


「先輩、放課後もここに来ますか?」

気づくと私は、廊下に出ようとする先輩にそんなことを聞いていた。


「来るよ」

先輩はニコリとした。


私はその姿を追いかけるように美術室を出て、揺れるおさげを見て「うさぎみたい」と、先輩は笑ったけれど、やっぱり悪意はないので、今度は怒らなかった。