心にきみという青春を描く




どうやら先輩は紙の質感のことを言っていたらしい。

ラフというのは荒い目をしてる紙のことで、コールドプレスは中目のこと。先輩いわく水彩画を描くには向いている紙なんだとか。

そしてホットプレスは細目。これはきめが細かい紙なので、ペンで絵を描く人が主に好むようだ。


「あとスケッチブックも水彩は相性がいいよ。ほら、笹森が持ってるオレンジと黒のやつ。あれはどこでも売ってるし、サイズも豊富だからまずはそういう手ごろな紙で練習してみるのがいいかもね」

先輩はさすがというぐらい詳しかった。


「描く絵によって相性がある紙があるんですね……」

無知な私は、みんな使う道具は違っても同じ紙を使ってると思ってた。


「これから覚えていけばいいよ。技術の前に色々と興味を持つことが大事だと思うし、まずは色んな画材を試して、好きなものを好きなだけ描きなよ」

「はい……!」


なんだか先輩のおかげでわくわくしてきた。今すぐにでもここにある絵の具を使って絵を描きたい気分。

そんな高揚した私の顔を見て先輩が、「なつめってさ」と問いかけてきた。


「なんか中学生みたいだね」

きっと先輩に悪気はない、と思う。


「……まあ、三月までは中学生でしたし」

「うん。中学一年生くらいに見える」

「ええ?」


……それはショックだな。たしかに童顔だし、身長も女子の平均より低いけど。

せっかくわくわくしてたのに、気分はみるみる落ち込んでしまい、先輩のせいだと口を尖らせてる私は、やっぱり幼いのかもしれない。


「このおさげがそう見えるのかな」

先輩が、ふいに私の髪の毛に触れた。


「……っ」

落ち込んでいたのに、すぐに私は固まる。両耳の下のほうで結んでいる髪の毛を、まるで弄ぶように先輩は指先で揺らしていた。