心にきみという青春を描く



それからまたみんなと合流して、村尾さんは午後の授業が控えているからと見学は二時間ほどで終了した。


「俺、先にロビーに行ってるね」

なぎさ先輩の眠気はピークのようで、見るからに体力ゲージが0に近い。


「アイツ本当は中身おっさんなんじゃねーの」

「もう、そんなこと言ったらまた言い合いになりますよ」


松本先輩に釘を刺しつつ、私たちの両手には大きな紙袋。

お土産、というわけではないけれど、どうやら生徒たちが練習で張ったキャンバスが余っていて『よかったら使って』と、デザイン科の人たちが厚意でくれたのだ。


「なつめちゃん、まだキャンバスで描いたことないだろ?よかったな。部活の時、練習できんじゃん」

「でもなんだか緊張しちゃいます。失敗したらどうしようとか」


紙だったら失敗してもまた次と気持ちの切り替えは可能だけど、キャンバスに描くというだけで初心者だから身構えてしまいそうだ。


「大丈夫だよ。俺なんてまだ油絵やってた時、吸収性があるキャンバスに絵を描いたらバッキバキに亀裂入ったから。マジであれは呪いだって騒いだな。そしたら笹森に当たり前ですよって呆れられてさ」  

「どうして亀裂が?」

「あーなんかキャンバスにも相性があるらしいよ。吸収性地だと油絵が向かなくて、逆に非吸収性地だとアクリル、水彩は絶対使っちゃダメとか」 

「そうなんですね!」

「俺はもう彫刻一筋だからキャンバスは使うことないけど、なつめちゃんもこれから絵を描くなら覚えておいたほうがいいよ。呪いだって俺みたいに騒がないで済むから」

「はは、ありがとうございます」


そっか。キャンバスにも種類があるんだ。美術は本当に知れば知るほど奥深くて面白い。

私はまだまだ絵の技術はないけれど、今日ここに来てよかった。

詩織先輩が言っていたとおり、いい刺激をもらえたような気がする。