心にきみという青春を描く




「……今はコンクールに作品を出したりはしないんですか?」

中学生の時の先輩は知らないけれど、絵の技術などは確実に上がっていると思う。


「出さないよ。べつに評価されたいとも思ってないし」

先輩はそう言いながら、再び飲み物を飲んだ。


評価は必要なくても、あの部屋に置かれた絵にはものすごい価値がある。それはお金を出して買いたいと言う人がいるほど。

私が言うのはおかしいかもしれない。でも、はっきり言えばもったいない。

たくさんの人の目に触れられるべき絵を、先輩はあの一室で乱雑に飾るだけ。


先輩は最優秀賞を獲った時、どんな気持ちだったんだろう。

自信に満ちあふれ、きっと誇らしかったに違いないのに。どうしてバレたくなかった、みたいな顔をしてるのだろうか。


先輩の影に見え隠れしている女の子の存在。


最優秀賞でモデルにした女の子と、部屋に上げたことがある女の子は同一人物ですか?

先輩が黒く塗りつぶしてしまった向こう側にいる人は、その子ですか?


「なぎさ先輩……」

なにひとつ聞く資格も、聞ける自信もないけれど、なにかひとつでも消化したかった。また沸々と表れたモヤモヤしている感情を。


「……あの!」


と、その時。廊下からぞろぞろとこっちに向かってくる女子の群れ。

私の言いかけた言葉をかき消すように、あっという間にテーブルが囲まれてしまった。


「見学の人ですか?」
「ここに通うんですか?」
「学校はどこですか?」

もちろん視線はすべてなぎさ先輩へと向いている。私はただ空気のように飲み物を飲むふりをしていた。