心にきみという青春を描く




「一週間前から静止デッサンをしててね。ほら、あれが課題」

村尾さんが中央に置かれているものを指さした。


そこにはスイカ、コップ、辞書、白鳥の置物があり、それらを取り囲むように丸椅子が置かれているから、生徒たちは円になってデッサンの授業をしていたのかもしれない。


「全部描いてもいいし、単体で描いてもいい。そうやって自分で選ばせるとけっこう個性が強く出るんだよ」

たしかに並べられたキャンパスは生徒たちそれぞれの画風や味があり、私が部活で描いたリンゴとは比べ物にならないくらいクオリティーが高い。


しかも完成したものをああやって生徒たち同士で酷評するなんて、やっぱり絵に特化した人たちが集まってるだけのことはある。

けっこうズバズバとダメなところも言い合ってるし、私だったら落ち込むだけになっちゃうけれど指摘されることで次の作品への向上心にも繋がるのだろう。



「月岡さんなら、なにを描く?」

生徒たちの熱量に圧倒されていると突然、村尾さんに質問されてしまった。



「え、えっと私なら……白鳥の置物を描いてみたいです」

「女子にはけっこう人気だよ。あの羽をどうやって密に描くかが難しいんだけどね」


羽を密に……。なんとなく円(つぶ)らな瞳が可愛いからと選んでしまった自分が恥ずかしい。


「松本くんは?」

「俺は分野違いですけど描くなら、まあ、スイカですかね。こんなに生徒がいるなら目立ったほうがいいんで、実物より倍の大きさで描きます」

「はは、面白いね」


村尾さんは講師をしているだけあって、私たちのことも生徒のような感覚で話してくれていた。


「詩織は辞書でしょ?細かいもの好きだもんね」

「もう、私だって白鳥を選ぶかもしれないじゃないですか」


……でも、やっぱり詩織先輩との雰囲気は生徒って感じじゃない気がする。