「詩織から話は聞いてるよ。松本くんに三上くんに月岡さんでしょ。まだ午前中の授業をやってるんだけど、気になる教室があれば好きに見学していいからね」
村尾さんの言葉に軽く会釈をしながらも、気になった〝詩織〟という単語。
なぎさ先輩は隣で眠たそうに目を擦っているけれど、松本先輩は……案の定、少しだけムッとしていた。
「最初どこから見る?一階?」
「基礎科は授業中ですか?」
「ああ、今ちょうどデッサン終わりの酷評会やってるよ」
とても親しげに話している村尾さんと詩織先輩。
並んでいる姿がとても自然というか……。詩織先輩の顔がキラキラしていて、それは私たちの前では見せない表情をしていた。
エレベーターで上に向かう途中、村尾さんが美術予備校について少しだけ説明してくれた。
ここではコース別で授業が分かれていて、昼間部と夜間部があるらしい。
生徒の年齢は中学生から20代半ばと幅広く、美大や芸大の現役合格は非常に難しいため、一浪、二浪してる人も少なくないんだとか。
「じゃあ、次はこの絵。誰に評価してもらおうかな」
基礎科と書かれた教室ではイーゼルに立て掛けられキャンパスを見ながら、生徒たちが床に座っていた。
キャンパスは生徒全員分。描かれている絵は統一されているようで、それぞれが微妙に違う。



