心にきみという青春を描く




「個性的な部員ばっかりで戸惑うでしょ」

「はい、あ、いえ……」

しまった。なぎさ先輩が私の心を読んだみたいに言うから、つい頷いてしまった。


「はは、ここでは気遣わなくていいよ。上下関係に厳しい人はいないし、みんな好きなことやってるだけだから」

そう言ってもらえると安心する。

なぎさ先輩は私より二つも上だけど親しみやすいし、なによりこの穏やかな空気感が心地いい。


「なつめはどんな絵を描くの?」

当たり前のように名前を呼ばれて、無条件で心臓が跳ねた。

高校は中学とは違う世界だと聞いていたけれど、男の先輩に『なつめ』と呼ばれただけで、大人の階段を登った気になる。


「か、描くって言っても好きなだけで上手くはないんです。でも水彩画の勉強はしたいなと思ってます」

平静を装いながら答えた。


「じゃあ、笹森に聞くといいよ。性格がツンとしてるだけあって、鼻の奥もツンとする絵を描くんだよ。今日スケッチブックを見せてもらえば」

言い回しが独特だけど、なんだかそこも魅力的に感じてしまうのは、名前を呼んでもらえて浮かれるせいかな。


「なぎさ先輩はアクリル画だけなんですか?」

「そうだよ。俺、ぼかして乾かしてまたぼかしてみたいな細かい作業が苦手だから、不透明の絵の具でやり直しができないみたいに一発で色を乗せるほうが合ってるんだ」

「……不透明の絵の具?」

「ああ、絵の具のこともあんまり知らない?おいで。教えてあげる」


丸椅子から腰を上げた先輩は、美術室にある道具がある場所に案内してくれた。