ぼんやりと縁側に座りながら月を見上げる。

冬だからかな?空気が澄んで、月がきれいに見える。

…昼間、源之助さんの部屋を出てから季龍さんはどこかに行ってしまった。信洋さんや平沢さんは気にするなって言ってたけど……。

今回のこと、多分季龍さんの知らないところで動いてる。源之助さんの独断?…それとも、なにか別の目的があるの?

「ミー」

子猫…確か……。

「トラ」

「ミー」

呼んでみると鳴いて縁側に飛び乗ってくる。手を伸ばすと、手にすり寄ってきた。

「何してる」

背中越しにかけられた声に肩が揺れる。…季龍さん、いつの間にそこに?

お風呂上がりなのか、ジャージ姿の季龍さに睨まれて思わず視線をそらす。

「あ」

「ミー」

季龍さんに驚いたのか、恐れたのかトラは逃げていってしまう。置いていかないで…。

そんなことを願っても戻ってこないのは当たり前で、逃げることも出来ない私はただひたすらに、季龍さんからの睨みをかわすように視線をそらすしかない。