「では、本日のイルカショーは終わりです!
みなさん!ありがとうございました!!」


お姉さんと愛菜たちが手を繋ぎ
大きくお辞儀をして終わった。

僕達は荷物を持って愛菜たちが出てくるところに向かったが遅かった。


もう、出口付近には20人近くの人がいた。


僕らは負けない。
自分の妻を守るため。

人混みをすり抜けてやっと出口までたどり着けた。


そして、愛菜たちが僕達に手を振りながら出てきた。
急いで!急いで!と焦らすも
2人は何のこと?とキョトンとしている。

出口から出てきて
愛菜の手を掴もうとした瞬間ーーー


「お姉ちゃん、

握手していい?」


幼いと男の子が、愛菜たちに言った。
愛菜はにこと笑って

「いいよー」

2人と握手した男の子は嬉しそうだった。
すると

「すみません、私も…」

その男の子のお母さんも同じように
握手を頼んだ。



時すでに遅し。


握手したい人達の行列ができていた。

スタッフも行列を端に寄せるため
コーンを急いで持ってきていた。


あの行列を見て僕はため息をついて
出口付近の客席に座った。

一番前より何段か上の席に座って
愛菜の顔が見えるようにした。
この行列は…おそらく20分くらいで終わるだろう。

1番最初の男の子に負けたというより
愛菜に負けた気がした。

もう少しで夕方になる。
夕日は見れるのかなと心配しながら
海を見つめていた。