「2人ともお名前は?」

「愛菜です!」
「春奈です!」

「では愛菜さんと春奈さんには
イルカと触れ合って頂きましょう!!」



イルカと触れ合う天使。
もちろん写真を撮ったが、周りのお客さんも写真を撮っていた。


「やべぇ!!
超可愛い!!芸能人?」

「天使だ!!女神だ!!」

「御加護があるかもしれないわ!!握手できないかしら?!」


男の人はもちろん
女の人も愛菜とはるちゃんに夢中になっていた。


愛菜とはるちゃんが選ばれたのも
プールに上がる人を選ぶ係の人が愛菜たちの前でぴたっと、およそ10秒くらい止まった。


多分、周りのお客さんと考えているのは同じだろう。



この触れ合いコーナーが終われば帰ってくる。それまでの辛抱だ。


何が辛抱か?
自分の嫁をみんなが見ているのは少し
嫉妬心が芽生えてしまう。


隣をチラッとみると僕以上に嫉妬心に燃えている男がいた。


「拓翔くん、これ終われば帰ってくるから!
辛抱!辛抱!!」

「いや…
俺、ここに来たことあるって言ったじゃん。」

「うん。」
なんだか、嫉妬以外の気持ちがありそうな雰囲気だった。


「実はこのコーナーでショーは終わり。

そして、触れ合いコーナーの参加者は一緒にショーを終えるんだ。

そして、終わったら客席に戻される。
つまり、他の客が自由になった瞬間にこちらへ戻る。

もう分かるよね?」


僕は焦りだした。
嫉妬心よりも怖いもの。恐怖。


きっと、愛菜たちが降りてくる瞬間
プールと繋がる通路は
芸能人の出待ち状態になるだろう。



「まずい!!!」


僕と拓翔くんは帰り支度をまとめて終わった瞬間、迎えにいくことを決意した。


もう、イルカショーより
2人の救出作戦の方が大事だ。


本当に、僕達の妻は理解できないことをしでかす。