居酒屋に入り、奥の個室入った。
個室と言っても和室ではなく
長い机の真ん中上部に換気扇がついてる
結構狭い部屋だ。
合コンとかによく使われているらしい。

トビラをスライドさせると
もう始まっていた。

「すみません、遅くなりました!」

「国分!加賀!早く早く!」
部長が真ん中の席で手招きして呼んでいる。

加賀くん、僕の順に入り
愛菜が入った瞬間に狭いのに全員起立した。

「国分さん、この可愛い子誰すか?」
後輩の子達は愛菜を見ながら僕に問おた。

「僕の妻です。」
僕の言葉の後にお軽く会釈した愛菜。

「えっと…いきなり来てしまいすみません。
国分愛菜です」


愛菜が話すと全員喋らなくなった。
ただ、愛菜を見つめるだけ
まあ、こんなの慣れてる。
ひとつ慣れていないのは隣でくすくす笑う加賀くんがいることだった。

「羨ましいっすよね!
ほんと、この子天使!しかも21歳ですよ!」

加賀くんが笑いながら言った。

「もう、とりあえず座りましょ!
僕、愛菜ちゃん、国分くんね」

「加賀さん!ちょっと待ってくださいよ!」
さっきまで、黙っていた後輩達が騒ぎ出した。

「10分置きに席替えしましょ!」

「はぁ?!合コンじゃねーんだよ!
僕と旦那の国分くんでこの天使を守るのだ!」

「それ、ズルくないすか?!別にやましい気持ち無くはないけど…」

「そ、そうすよ!こんな可愛い子そこら辺にいないっすよ!ツーショットだけでもいいじゃないっすか!」

「いや、みんな、愛菜が嫌がるから…」

愛菜を見ると笑っていた。
気まずさも苦い感じもなく、いつもみたいに笑っていた。


後輩達と加賀くんの抗争の中
笑う愛菜。

今までグルグル考えていたことが
頭からスっと抜けた気がした。
いや、抜けてはいけないものかもしれないけど
この笑顔を見たら…


これ以上に優先すべきことなんて、この世にあるだろうか。