自分の家がどんなになってるか知らない恭也は
仕事を終え、デスク前で帰り支度をしていた。

「国分!!」

上司に呼ばれ、バッグに荷物を入れるのをとめ
振り向いた。

「はい」
上司が少し離れたところから手招きをしていた。
内心、自分で来て欲しいなぁと思った。

「国分、結婚してから僕に奥さん紹介したことないよね?」

その質問にビクッとする恭也
話が聞こえる距離にいた加賀くんは
ニヤッと笑い、近づいてきた。

「そーなんすか?!
こいつの奥さん、めちゃくちゃ可愛いっすよ!」

「ちょっと、加賀くんやめてよ!」

「そうなのか!!じゃあ、今日の飲み会連れてきてよ!今日は少人数なんだし!」

少人数って言ったって
6人もいるのに…

そう思いながらも嫌そうにしながら
愛菜を呼ぼうとする。
飲み会の場所はちょうど、僕の家の最寄り駅
愛菜も来やすいだろうから大丈夫だと思うけど…

他の男に合わせることも、
僕より歳が近い同僚に合わせることも
正直嫌だった。

「ねぇ、愛菜ちゃん呼んだほうが
早く帰れるかもよ?」

加賀からの言葉に、これは大チャンスだと
愛菜に電話した。
いつもなら、深夜まで付き合わされてしまい
次の日に響いてしまう。
30過ぎてからより、響いてしまい正直最近の飲み会は辛かった。


「あ、もしもし?愛菜、今から駅前これる?」

「すみません、すぐには厳しいです。」

「え?どうしたの?」

「今、恭也さんの元カノの小泉理沙子さんがお見えになっていて…」

「…へ?」
思考が止まった。理沙子?あ、理沙子。
何で理沙子が?…
理沙子が来てるのに動揺もしない愛菜の声にも驚いたが、何故今になって理沙子が来るのか検討もつかなかった。

「お返ししたら向います。では、また後で。」

そういい、切られた。
なぜ、理沙子がうちに?
あいつ、何しに来たの?あれ?どんな別れ方したっけ?

状況に焦りを感じていると
愛菜からメールが来た。

「今、お帰りになったので向います。」

良かったぁ…
早く会って事情を聞かないと

愛菜を連れてくるから、先に居酒屋に行ってるよう
加賀くんに伝言を残し
駅前まで向かった。