だけど、健への愛情がそれを可能にしていたんだ。


「大丈夫だよ、杏」


そう言ってニッコリと笑った時、体がフラリと揺らめいた。


慌てて壁に手を当てて体勢を保つ。


あたしの体は大事な食料だもん。


気をつけなきゃね。


「ナツミ、ちょっと来て」


不意に、杏があたしの手を握りしめて歩き出した。


「ちょっと、なに?」


「いいから」


ズンズンと歩いて行く杏に、ついて行くだけで必死なあたし。