あたしはゴクリと唾を飲みこむ。


「仕事だって言ってるじゃないか」


お父さんの声はかなり苛立っているのがわかった。


「本当に仕事なの!? この前は香水の匂いがしてたわよ!?」


「あれは接待だったんだよ。仕方ないだろう」


「仕方ないってなによ!」


こんなのよくある痴話げんかだ。


犬も食わないと言われているじゃないか。


自分自身にそう言い聞かせて見ても、心臓に嫌な汗が流れているような感覚がする。


自然と握り拳を作っていたようで、手のひらが熱を持っている。