「ひっ………!!!!」
彼女はそんな僕の行為に高い声をあげて椅子ごと転げ落ちた。
彼女の僕を………いや、男性を見る目は、まるで、死を目前とした小動物のように怯えきっていた。
「………」
僕は彼女の行動にしばらく言葉を失った。すると、彼女は我に帰ったようにはっとした表情を浮かべ、すぐに立ち上がった。
「ご、ごめんなさい……あなたは、悪くないから」
彼女はそう言うと、また椅子を起こして絵を描き始めた。
僕に心配をかけまいとしているのだろうか。
「ごめん。マキさん。僕、今日はもう帰るから。マキさんも、今日は早く帰った方がいい」
僕はそう言うと、鞄を持って美術室を去った。



