「ならいっそ、僕をいじめれば良いのに。
なんで僕じゃくて、彼女がいじめられなきゃならないんだ……」
僕は、僕の無力さを実感した。
僕はなんでこんなに弱いんだろう?
どうすれば僕の周りは変わるのだろう?
ただ、無性に、彼女への思いはいよいよ本物となる。
いじめという共通の経験を経た彼女が僕の中で本当に特別な存在へと変わっていく。
同時に僕の恋慕は、僕が人間に初めて抱いた愛情であったと僕は断言できる。
他者を嫌い、自ら他者を否定した僕が、自分以外の誰かを、僕以上に大切なものだと思えた気がした。
見返りはない。無償に彼女を愛したかった。
他でもない、彼女だから、僕は愛した。
そんな思いを抱いたのは初めてだった。
そして、その気持ちは、本当に幸せなものだった。



