部活の朝練のせいなのか、それともただ単にやる気がないだけなのか。
彼はいつも隣で気持ちよさそうに授業中机に突っ伏している。


「ちょっと俺にも貸してくんない? 今回のテストまじでやばいんだよ〜」

「え、えーと……狼谷くんに聞いてくるね」


そう返して立ち上がったはいいものの、教室内で狼谷くんに話しかけるのは初めてだ。
正確に言えば初めてではないけれど、大体委員会の前に「行こうか」と軽く言葉を交わすだけ。あとは朝タイミングが合った時に挨拶するくらいだ。


「狼谷くん」


眠たそうに頬杖をついていた彼に、横から声をかける。


「どうしたの」


狼谷くんは意外そうに眉を上にあげて、こちらに体を向けた。

彼の近くの席の人から視線が飛んでくる。
いくら同じ委員会とはいえ、やっぱり私と狼谷くんが二人で話すのは珍しい絵面なんだろうな、と他人事のように考えた。


「えっと。霧島くんがね、狼谷くんのノート貸してくれないかって」

「ふーん……別にいいけど」

「ありがとう」