静かな空間に、本のページを捲る音が時折響く。
周りは読書をしている人がほとんどだ。まだテスト期間じゃないから、よほど心配性じゃない限り本格的に勉強する人はいないだろう。

図書室は私語厳禁というわけでもなくて、ぽつぽつと話すくらいなら黙認されている。

私と狼谷くんは机を挟んで向かい合わせに座った。


「羊ちゃん、この前の小テストって何点だったの」


開口一番、狼谷くんはそう聞いてきた。
教科書を取り出そうとしていた私は、「え」と思わぬ質問に固まる。


「できればテスト用紙見せて欲しいんだよね。どこが苦手なのか分からないから」

「あ、えーと、そうだよね……」


正論だ。ド正論だ。
でも余裕で赤点のテストなんて、見せたらなんて言われるんだろう……。

かといって教えてもらう手前、見せないわけにもいかない。
私は渋々ファイルからテスト用紙を抜き出して、狼谷くんに差し出した。


「どうぞ……」


彼は受け取って、それからまじまじと用紙を見ると、


「ひどいね」

「か、狼谷くん……!」