俺が言いつつ笑うと、彼女の目が揺れた気がした。
それに何となく気まずくなって、顔を伏せる。


「知ってるとは思うけど、あいつ女関係だらしないし、結構ゲスいし?」

「……うん」

「もし、万が一、白さんが玄を――ってなったら、辛いのは白さんだと思うから」


白さんは真面目だ。そして、普通だ。
俺とか玄みたいに、ろくでもないクズを真剣に相手できるような子じゃない。

玄もそうだとは思うけど、俺も一応、自分がクズだという自覚はある。

そして関係を持つのは、決まって向こうから誘ってくる女の子だけだ。
白さんみたいに真面目な子を取って食おうとか、そういう趣味はない。


「だから、深入りしない方がいいよ」


君はこっち側に来ていい女の子じゃない。
何も、自ら溺れる必要なんてないんだから。


「岬」


ドアの開く音がして、俺は小さく息を吐いた。


「……思ったより早かったね、玄」


白さんの手に保冷剤を預けて、椅子に脱力する。