そこにいたのは、冷蔵庫の前でちんまりとしゃがみ込むクラスメートだ。
彼女――白 羊は、玄と同じ文化委員を務めていて、そのおかげで顔と名前がきちんと一致している。

まさか先客がいるとは。
玄も珍しくかなり驚いた様子で、呆然と彼女を見つめていた。


「え、と……」


か細い声が狭い空間に響く。
白さんはこわごわと顔を上げると、その視線をこちらに向けた。

彼女の鼻にはティッシュがねじ込まれていて、根元が真っ赤に染まっている。
鼻血? 何で? まあそれはいいとして、その赤さに負けないくらい、彼女の頬は恥ずかしそうに火照っていた。

……いや、情報過多すぎんだろ、この状況よ。

黙って白さんを見下ろしていると、彼女の瞳がきらきらと揺れる。
真ん丸の綺麗な目に涙の雫を溜めて、瞳を潤ませていた。

その瞬間、かっと体が熱くなり、俺は咄嗟に目を逸らす。


「あー……」


何だ? 何で今、ぐっときた?
彼女のものが伝染したのだろうか。顔が火照って仕方ない。


「保冷剤ね。うん、ちゃんと冷やした方がいいよ。こっちおいで?」

「えっ、」