「玄ー! そろそろ切り上げろ! 昼飯食いに行くぞー!」


保健室のドアを開け、俺はそう叫んだ。

球技大会真っ只中。
朝一に自分のクラスの試合を終え、その後に審判やタイムキーパーをこなして、ようやく一息つける。

試合が終わった後、節操のない友人は女の子に誘われて、ふらりといなくなった。
行き先は保健室だろうな、と分かったのは、自分もそっち側の人間だからだ。

球技大会の日はすぐ対応できるように、グラウンドか体育館に保健の先生がいる。つまり、保健室は実質空き教室だ。

奥のベッドから物音がする。
閉め切られたカーテンがあいて、端正な顔立ちの男子生徒が一人、俺を睨んだ。


「岬、声でかい。普通のボリュームで聞こえ……」


大胆に開いた胸元と、外れかけたベルトが何とも生々しい。
友人――狼谷玄は、いつもの如く俺に不服を垂れようとして、途中で言い淀んだ。

彼の視線は下の方、それも随分下に釘付けになっている。
それを辿って、思わず声を上げた。


「あれ!? 白さん、何でこんなとこに?」