「うん。ちょっと、冷やした方がいいかなあと思って」


彼が保冷剤を持っているのを思い出して、ああ、と納得する。


「でも、さっき自分でやってって……」

「あはは。それはそれ、これはこれ」


津山くんはそう言って、手を伸ばしてくる。


「白さんさ」

「うん?」

「玄と友達って、前に言ってたよね」


頷いて、私は彼の言葉の続きを待った。


「あんまり玄の言うこと鵜呑みにしない方がいいよ。ほら、白さん真面目だから」


津山くんが笑う。何の他意もなく。


「知ってるとは思うけど、あいつ女関係だらしないし、結構ゲスいし?」

「……うん」

「もし、万が一、白さんが玄を――ってなったら、辛いのは白さんだと思うから」


冗談のようなトーンだけれど、きっと冗談ではない。
これは多分、彼なりの心配なんだろうなと、そう思った。


「だから、深入りしない方がいいよ」


――そして、忠告でもある。


「岬」


津山くんの後ろでドアが開いた。


「……思ったより早かったね、玄」