俯いて声を震わせる彼女を、優しく慰める。
弱り切って疑心暗鬼になって、わけがわからなくなったところに手を差し出す。そうすれば彼女も掴んでくれるかもしれない。


「大丈夫。俺は一応色々見ちゃった立場だし、話ならいくらでも聞けるし……白さんが悪くないのも、ちゃんと全部分かってる」


君を分かってあげられるのは、助けてあげられるのは俺だけなんだと。ゆっくり暗示をかけるように説き伏せる。

ああ、愚かだな。君がそんなに悲しい思いをしているのは俺のせいなのに、俺の言うことを真に受けて周りに怯えだしている。なんて愚かで愛おしいんだろう。


「俺は絶対に、味方だからね」


駄目押しのように言い募る。

俺だけを頼って、信用して、泣きつけばいい。そうすれば後は俺が全部消してあげる。
君を泣かせる節操のない彼氏も、べたべたと纏わりつく女友達も、全て目障りだ。君と俺の二人。それでいい。


「うん……ありがとう」


遠慮がちに笑う彼女の声に酔いしれる。
ああ、早く。早く俺を選んで。俺がいなければ、息もできなくなればいい。

次の日から、彼女はその目に怯えと疑念を映し始めた。完全に疑うことができないのが、また彼女の人の良さを表している。


「羊ちゃん」