嫌な沈黙を破ったのは、彼だった。


「え?」

「いや……今日、朝からずっと様子おかしかったから。昨日、とか。何かあったのかなって」


彼の顔をじっと見る。

何かあった? 様子がおかしかったから?
確かに、それは間違っていない。私の変化に気付くくらいには、彼は私のことを気にかけてくれている。
それは分かった。分かったよ。だったら、どうして。


「なに、それ……」


誰のせいでこんなに悩んでると思ってるの。泣きたくなるくらい、実際泣くくらい。誰のせいで。


「玄くんが……」

「え?」

「玄くんが、もう、分かんないよ……!」


気に入らないことがあるならそう言えばいいじゃない。嫌だから直して、とか、今は忙しいからそっとしておいて、とか、言葉にしてくれれば私だってこんなに困ってないよ。

突然声を張り上げた私に、彼はひたすら戸惑っているようだった。

またお互い黙り込んで、喧騒が遠く聞こえる。


「ごめん……」


消え入りそうな声。酷く気落ちした謝罪が耳朶を打った。


「ごめん。俺が悪いよな……分かってる。ほんと、嫌になるよ……」