下駄箱からローファーを取り出し、その場に固まる。
靴の中。見覚えのない、折りたたまれた白い紙が入っていた。


「……白さん? どうしたの」

「え? あ、ああごめんね、何でもないよ」


さり気なくそれを片手で回収して、へらりと笑ってみせる。
しかし坂井くんは怪訝そうにこちらを凝視していた。


「白さん。それ、何?」


誤魔化せなかったらしい。
彼は目敏く私の右手に握られたものを指し、端的に問うてきた。


「ううん……? 何だろうね、私もいま見つけたから分からなくて」

「貸して」

「えっ」


坂井くんが手を差し出す。恐る恐るその上に託すと、彼はゆっくり慎重に開いていった。

瞬間、彼の顔が強張る。


「坂井くん?」


様子がおかしい。彼の手元を覗き込んだ。


「え?」


何本も引かれた黒い線。感情の荒ぶりをそのまま筆に乗せたかのような、物々しい字面。


「……見ちゃだめだ」


坂井くんが我に返ったようにその紙を自身の胸元に引き寄せ、静かに首を振る。

何、今の。
全身から血の気が引いていく感覚。脳が警鐘を鳴らしていた。


『消えろ』

『邪魔』

『役立たず』