「あ、あった……!」


机の中を覗き込んで声を上げた私に、坂井くんが「ほんと? 良かった」と息を吐く。

坂井くんのおかげで資料室から出られた私は、スマホを探しに教室へやって来た。心配だからついていくよ、という彼の申し出に甘えることにして、いま無事にそれを発見したところだ。


「でも、机に入れた記憶なんてないんだけどなあ……」


ましてや、鞄から出していないはず。
今日の自分の行動を朝から順に脳内で辿っていると、坂井くんが口を開く。


「うーん、教科書とかと一緒に紛れ込んじゃったのかもしれないね」

「そうだよね……うん、見つかったから良かった。ごめんね、付き合わせちゃって」

「ううん。帰ろうか」


微笑む彼に頷いて、緩慢に立ち上がった。

薄暗い廊下や階段はやっぱり気味が悪かったけれど、一人じゃないというだけで幾分かマシで、もし彼が来てくれなかったら本当にここで夜を越していたんだろうか、と身震いする。


「坂井くん、本当にありがとうね」

「お礼はさっきも聞いたよ。気にしないで、白さんは悪くないんだから」

「うーん、でも坂井くんが来てくれなかったら――」