うん、分かってる。
坂井くんは眉根を下げて同調し、沈痛そうな面持ちで視線を落とした。


「俺も、九栗はそんなことしないと思う。……でも、白さんの話聞いてる限りだと、それ以外……」


その先はさすがに言うのが憚られたのか、彼は口を噤んだ。

朱南ちゃんが? あり得ない。だって彼女はいつも眩しいほどの笑顔を向けてくれる。陽気に話しかけてくれて、名前を呼んでくれて。


「……白さんは、本当にいい人、だと思う」


唐突に、坂井くんが呟く。


「いい人すぎて、みんな羨ましくなっちゃうんだよ。それが純粋な羨望だったら、いいんだけど……」


哀しげに目を細めた彼の言外に、見つけたくない意図を汲み取ってしまう。
坂井くんは私の顔を覗き込んで、困ったように微笑んだ。


「ほんと俺、白さんの泣いてるとこばっかだなあ……」

「あっ……ご、ごめ、」

「ううん。辛い時は泣いていいと思う。俺の前では、遠慮しなくていいから」


ぽんぽん、と軽く頭を撫でられる。
思わず首をすくめると、「ああ、ごめんね」と彼は距離を取った。


「狼谷とは、順調?」