空が白く曇っている。ここのところ、毎日そんな景色だ。
もやもやと居座る厚ぼったい雲は、自分の胸中を投影しているかのようで。今日何度目かのため息をつく。


「あ、羊~」


帰る準備をしていると、朱南ちゃんが駆け寄ってきた。
顔を上げた私に、彼女が朗らかに言う。


「伝言! 森先生がね、このあと資料室に来てって」

「え、ほんと? 分かった」


まさか、また進路のことについてだろうか。資料室というくらいだし、大学の資料を参考にしながら話をするのかもしれない。

ありがとう、と短く感謝して、彼女と別れる。

途中でカナちゃんを捕まえて、先に帰ってもらうように話をつけてから、資料室へ向かった。


「失礼します……」


職員室ではないから丁重に断りを入れる必要はないけれど、ここへ入るときは何となくかしこまってしまう。
ざっと中を見回した。まだ掃除のチェックが終わっていないんだろうか。森先生は来ていなかった。

ひとまず椅子に腰を下ろして、近くにあった冊子を適当に眺めてみる。偏差値や倍率、数字のデータが諸々飛び込んできて、すぐに見るのをやめた。

そうして数分、だっただろうか。
独特な資料室の匂いにも鼻が慣れてきた頃、ドアの方から物音がした。

かち、と。