多分、絶対、大丈夫じゃないと思う。

玄くんは相変わらずハードな毎日を送っているようで、今日も今日とてげっそりしていた。ここ数日で彼の表情の暗さに拍車がかかったような気がする。


「……玄くん、お疲れだね」

「ん。大丈夫」


委員会が終わった後、すぐに立ち上がらずそのまま項垂れた彼。
木曜日はバイトを入れていないらしい。早く帰ってしっかり睡眠を取った方が良さそうだ。


「次のお休みっていつ?」

「……土曜日、の十五時まで」


それ休みって言わないんじゃないかなあ……。
完全に弱りきった彼が何とも不憫だ。そこまでして買いたいもの、欲しいものとは一体。

教室内は既に人気もなく、私たちが唯一の滞在者だった。それを確認した私は、立ち上がって彼の元へ歩み寄る。


「玄くん、」


さらさらの黒髪に手を伸ばそうとした刹那、彼が顔を上げた。少し慌てたように私から身を引いて、視線が落ちる。


「ごめん」


聞き慣れた声が紡いだ、聞き慣れないばつの悪そうな謝罪。
ごめんって、何が? 喉まで出かかった問いを噛み殺す。


「……帰ろっか」