申し訳なさそうに告げる口調からは、私への気遣いが伝わってくる。
彼なりに話そうか話さまいか悩んだのだろう。坂井くんは正義感が強いところもあるから、黙っておけなかったのかもしれない。


「ごめんね。話しにくいこと、わざわざありがとう」

「ううん。むしろごめん。何かあったら俺に言ってくれていいから」


頼もしい言葉をもらって、少し安心した。
ともかく、明日カナちゃんと話してみよう。きっと彼女のことだから、何か理由があったに違いない。

――そう決心した翌日。


「気ぃ遣ってくれたのはありがとうだけどさ。だから津山くんとはそういうんじゃないって言ったじゃん」


朝のバスの中。どうやって切り出そうか悩んだ挙句、「昨日、大丈夫だった?」と問いかけた結果、カナちゃんから返ってきた答えがこれだった。


「え? えっと……」

「津山くんも津山くんだよ。何で満更でもないって顔してんの? 女の子なんて選り取り見取りのくせに」


そこからはひたすらにカナちゃんの独壇場だった。
昨日は津山くんと二人で出掛けたこと。知り合いに会って、誤解を解くのに大変だったこと。
カナちゃんはずっと津山くんのことを話していて、私の方は向いてくれなかった。