濁しながら述べた坂井くんの瞳には、労りと心配の色が見て取れた。心優しい彼の性格が身に染みる。


「あはは、ありがとう……うん。でもまあ……こういうことも覚悟してなかったわけじゃないし」


むしろ今までが平和すぎたのかもしれない。
元々玄くんは沢山の女の子から憧れられていて、彼女という立場になった以上、妬みや恨みなどはある程度仕方ないと思っていた。
とはいえ、あそこまで直接的に悪意百パーセントの態度をぶつけられたのは生まれて初めてで、少し落ち込んでいる自覚はある。


「こういうことって……浮気されるってこと?」

「え? いや、」

「白さんはそれでいいの? 散々弄んでおいて捨てるとか、許せるの?」


坂井くんが怒ってくれているのは有難いし、至極真っ当なのだけれども、生憎論点が違う。盛大に勘違いをしているようだ。

慌てて手を振り、「違う違う」と否定に徹する。


「浮気とかそういうことじゃなくて。こうやって女の子に色々言われちゃうのが……」

「余計なお世話かもしれないけど、白さんやっぱり無理してない? 修学旅行の時だって、狼谷に泣かされてたし」

「えっ? 無理なんてしてないよ! あれは何というか、私が勝手に空回ってただけで……」