二人ってそんなに仲が良かったっけ。
津山くんは比較的誰とでもフレンドリーに絡むけれど、カナちゃんはそうでもない。だからといって邪険にするというわけではなくて、当たり障りなく接しているような印象を受けた。


「……別に、何もないから」

「うん?」


会話が終わったものだと思っていたから、突然聞こえたカナちゃんの言葉に首を傾げる。


「津山くんは確かに顔はいいけど、タイプじゃないし。というかそもそも女癖悪すぎるし」

「えっと……カナちゃん?」

「ギャップ萌えだか何だか知らないけど、そんなんでほだされたりとかしないから」


一体何の話が始まったんだろう。とにかく津山くんがカナちゃんのタイプではないということは分かった。

いつものごとく学校前のバス停で降りて、彼の姿を探す。その背の高い影を見つけて駆け寄ろうとした矢先。


「あ、西本さん。白さんも。おはよー」


見慣れた黒髪の彼の隣。ひらひらと手を振って歩み寄ってきた津山くんに、私はもちろんカナちゃんも心底驚いていた。


「な、何で? どうしたの?」


一見冷静に感じられるかもしれないけれど、多分カナちゃんはすごく動揺している。その証拠に、彼女は髪を耳にかけて視線をさ迷わせていた。


「えー、リア充の恩恵にあずかろうと思って」

「津山くんならそんな必要ないんじゃない?」

「うーん、まあその必要性が出てきちゃったんだよねー……」