背中をさすってあげると、彼は拗ねたような口調で呟いた。


「……羊ちゃん、もっかい」

「ん?」

「キス、したい」


数分前の自分の行動を思い起こし、頬が火照る。

玄くんは額をこつん、と合わせてくると、眉根を寄せた。


「ずるいよ、あんな風にしちゃうなんて。最初は俺からしようと思ってたのに」

「えっ、ご、ごめんね……んっ、」


ちゅ、と触れるだけのキス。すぐに離れて、再び顔が近付く。


「玄く、んっ」


二回、三回、と角度を変えては、小刻みに重なる唇。その合間に「好き」と囁かれて、体温が上がった。


「や、もう、だめ……」

「何で……? もっとしたい。いっぱいしよ」


ストレートな要求にたじろいでしまう。

熱く柔らかい感触がまた降りてきて、今度は一度重なるとなかなか離れなかった。それどころか、下唇を吸われるのと同時、驚いて咄嗟に開けた口内に、彼の舌が入ってくる。


「羊ちゃん、鼻で息して……もっと口開けて。そう、いい子……」


脳が、思考が溶けていく。熱くて熱くてどうにかなりそう。
何が何だか分からないまま、彼に委ねて考えるのをやめた。

ただただ幸福で、満たされていく気持ち。
それは彼も同じだったようで、ようやく離れた後、熱に浮かされたような瞳で――って、


「玄くん! 熱!」