うん、と返したつもりだったけれど、自分の声は掠れていて。

隣を歩いているはずなのに、さっきまでよりもずっと遠くにいるような気がしてしまった。
お互い視線は合わないまま。途中まで繋いでいた手はすっかり空いて冷たくなって、それがとても悲しかった。

ああもう――本当に、情けない。一人で空回って叫んで、こんな顔をさせて。


「あ、戻ってきた。あれ〜、何で羊が狼谷くんのパーカー着てるの〜?」


ホテルの前。帰ってきた私たちを見つけて、朱南ちゃんが揶揄い口調で近寄ってきた。

それに当たり障りなく答えようとして、言葉が詰まる。
私の様子に首を傾げた朱南ちゃんの瞳が揺れた。

彼女の後ろには津山くんたちの姿がある。みんなの顔を見て安堵したのか、自分の中でがらがらと何かが崩落した。


「えっ、羊!? どうした……?」


なぜだか分からないけれど、もう、だめだった。
全然上手くいかない自分自身がやるせなくて、みっともなくて。
一度溢れてしまうと止まらなくなって、私は隠すこともせずにその場でしゃくり上げる。


「……とりあえず中入ろう。ね?」


朱南ちゃんが背中をさすってくれた。
カナちゃんとあかりちゃんも戸惑ったように、それでいて刺激しないように、声を掛けてくれたのが分かった。

怖くて隣は見れなかった。
伝わってくる空気感だけで、一番大切な人を傷つけてしまったのを実感したから。